おそらくどこかで話の行き違いでもあったんでしょう。ゴルフのカップサイズを決めたのがオールド・トム・モリスだという俗説のことです。
結局そのウワサは風評として伝播し、たくさんのゴルファーの間に定着してしまいました。
※オールド・トム・モリスは”トム・モリス・シニア”とも呼ばれます。息子はヤング・トム・モリス(全英オープン4連覇)
キャリアの古いゴルファーほど「カップサイズを決めたのはオールド・トム・モリスなんだよね」といいます。ということはだいぶ昔からの勘違いだったということが分かります。多分遠い国のことなので一時的に情報が錯綜したのかもしれません。
今回はカップサイズを決めたのはオールド・トム・モーリスではないという証拠があったというゴルフのトリヴィアです。
カップサイズに纏わる面白いトリヴィア
ゴルファーの皆さんならご存じの通り、ゴルフのカップ(ホール)の大きさは直径4.25インチ(108ミリメートル)というのが世界スタンダードと決まっています。
このサイズ、絶妙なんでしょうね。だって正式にR&Aが決めてからすでに133年くらいず~~っと変わっていません。その前の時代を入れれば200年!?よっぽどどこからも不満が出ない理想的なサイズなんですね。
直径108ミリというと、ちょうど一升瓶とかトイレットペーパーの直径と殆ど同じ(どちらも約104mmくらい)ですね。この108mmというゴルフのカップサイズがゴルファーの闘争心に火をつけます。
1mくらいから見ると入りそうですが簡単ではない。外れると癪に障るんですね。
だからゴルファーはもう一度挑戦したくなる、そう誘っているような憎らしいサイズだとも言えます。
ボールサイズとのコンビネーションも含めてまさに最適。
ちなみに、画像で示したようにボール三個横に並べるとわずかに両端が1cmほどはみ出す寸法です。
ボールを3個並べてクラブのシャフトを使い、カップに向かってそっと押してやるとこの3個は相次いでカップに落ちます。
ボ-ルの重心がインサイドに入り、スピードがないボールはカップに沈むので実質的に3個分以上の直径がカップにあると考えて大丈夫です。
よくホールカップには360度のドアがあるというのはこのあたりのことですね。
ゴルフボールの直径はルールで42.67ミリ(1.68インチ)以上と決められています。1990年までは41.14ミリ以上でよかったのよ。
カップサイズを決めたのはオールド・トムとは無関係だった
カップサイズを決めた俗説とは、オールド・トム・モリスが市の水道管を適当な長さに切って穴に埋めたという、彼の画期的なアイディアだったというもの。その水道管の内径が4.25インチだったので今に伝わったということになっています。
英国の文献などネットでググってその説を洗ってみました。
するとずいぶん明確な資料が出てきました。
1825年スコットランドの名コース、ロイヤル・マッセンバラではすでに4.25インチのホールカッターを使っていたという記録が見つかりました。そのカッターには「グランド・ダディ」というニックネームつけられ、いまも現存してマッセンバラのクラブハウスに展示されています。
4.25インチという中途半端なサイズは、俗説通りセントアンドルーズ市の水道管が応用されたのは間違いなさそうです。
この事実からいうと、オールド・トムが生まれたのが1821年。彼が4歳の時にはすでにグランド・ダディが存在したわけですね。
オールド・トム・モリスの本名は”Thomas Mitchell Morris”。1821年6月16日生まれで亡くなったのが 1908年5月24日でした。
オールド・トムが表に出てしまった”いきさつ”がある
しかしさらに深堀りすると、オールド・トムが全英優勝後、ホールカッターを改良してかなり合理的なものを考案した事実があります。
このことを踏まえるとちょっと想像が入りますが、オールド・トムがチョー有名だったために後々の時代に混乱を招き伝説になったのかもしれません。
おそらく「そんな大事なことを決められるのは、当時としてオールド・トム・モリスくらいしかいなかったでしょ」と軽く口にしたのがやがて真実として定着したのかもしれません。
オールド・トムは1861・1862・1864・1867年に全英オープンを制しました。この実績のおかげで一度解雇になったセント・アンドルーズに復職しています。
全英覇者という当時の功績があるためカップサイズとオールド・トムが結びついたんだと思います。
彼がいかにゴルフがうまかったかはいろいろありますが、78歳の時「77」のエージシュートを達成した記録が残っています。
ちなみにR&A(英国ゴルフ協会)は1891年になってはじめて、正規のルールとしてカップのサイズを4.25インチと定めています。ボールの大きさもコースの距離も少しずつ変わってきましたが、カップのサイズは133年間不思議と1度も変更されていません。
現在のカップサイズはマッセンバラのリンクスから始まりました
このホールカッターが誕生したいきさつも、ロイヤル・マッセンバラの沿革として記録されています。
1700年に入りゴルフはますます盛んになります。当時のグリーンキーパーの仕事の大半は古いホールの穴を埋めて新しい穴を掘ることでした。
なんと彼らは「ホールカッター」と呼ばれていたようです。なぜそれほど穴が荒れたのか?
ホールアウト直後にゴルファーが穴の底をさらって砂を掘り、今のティーペグ代わりにしていたせいです。
その辺の面白いトリヴィアは下記のサイトにありますので是非ご覧ください。
そんな状況ですからカップサイズに標準はありません。ホールごとにバラバラというかマチマチ。今のゴルファー初心者さんなら、カップサイズって決まりがなかったのぉ!ってビックリするでしょうね。
1825年、スコットランドのロイヤル・マッセルバラはついにホールカッターという均一なサイズと形状のホールカットができる新兵器を入手したのでした。
ちょっとわからないのはこの機械が1ポンドだったという記述です。そんな安かったのかなぁ?
ゴルフのホールカップのサイズを標準化した功績
マッセルバラが行ったホールの標準化は革新的でした。しかしスコットランドからイングランド一帯に浸透するまでしばらく時間がかかりました。
当時の地元誌”Historical Dictionary of Golfing Terms”は1858年の新聞記事を引用し、どこかのコースには6インチ前後のホールがあることに言及していて、スコットランドとイングランドのリンクスのサイズのばらつきが当時まだ一般的であったことを示しています。
4.25インチのホールサイズは、1891年にセントアンドルーズのR&A(ロイヤル&エンシェントゴルフクラブ)が発布した新しい規則のもとに普遍的な標準になりました。
最初に発明されたホールカッターが現在の標準の直径だったことは、いまでもマッセンバラ・リンクスの周囲に埋設されている水道パイプによって裏付けられています。
ビッグ・ホールカップ・サイズに挑戦した有名プロたち
4.25インチというサイズに?懐疑的なトッププロたちは確かにいました。
例えば1930年代(詳しい年度が分からない)に、ジーン・サラゼンは8インチ(約20cm)のカップで実験しています。彼はその後もルール会議でこのことをアツく発言しています。
ジャック・ニクラウス、2011年に彼は8インチのカップを開けたスペシャルイベントを開催しています。その会場もなんとあの有名なミュアフィールド・ビレッジ・ゴルフ・クラブ。
さらにメーカー側のテーラーメードは、2014年にセルヒオ・ガルシアなどのプロゴルファーをフィーチャーした15インチのホールでプレーするエキシビションを後援しました。
日本のテレビのゴルフバラエティ番組では、1mものカップを掘って、「ホールインワンに挑戦!」なんてやってますね。面白いことサイコーです。
世界のトップレベルなトーナメントまでが、標準的な4.25インチのホールサイズ以外でプレーされるかもしれないという恐れを持っても不思議ではないかもしれません。
しかし今のあらかたのゴルファーたちは現在のカップサイズに満足しています。
でも将来はわかりませんよ。アマチュアゴルファーにとってプレー時間が短くなったりパット数が減ることは大体歓迎ですからね。
カップサイズは誰が考えた?のまとめ
今回はカップサイズにまつわるトリヴィアでした。いかがでしたか?
お読みいただいた方の中には、逆にカップを倍の大きさにしてしまったらパットの楽しさは半減してしまうのではないか・・と心配する方がいらしてもおかしくありませんね。
あなたはどんな風にお考えでしょう?
ゴルフには長~~い歴史があり、知れば知るほど興味は深くなります。そんなゴルフのトリビアを探っていきましょう。
多くのゴルフファンは、ときどき何気ない質問に戸惑うことがあります。
例えば今回のカップのサイズって誰が決めたの?のようなこととか、ゴルフの起源ていつなのかなぁ?、新宿御苑にゴルフコースがあったってマジ?、ボビー・ジョーンズの本名にボビーがないってホント!、坂本龍馬はゴルフの経験者?などなど。
このサイトではそこをグリグリっと風穴を開けていきます。
カップサイズとパッティングのジョーク
今日はカップサイズが小さく見えるといえばパットが不調の日、ボールがカップの淵に触ってからクルッと回転して出てしまうと「リップアウト」なんて言います。スイカの種を吹き出すようなイメージからですね。
さらに入りそうだったパッティングが、左右どちらかわずかに外れた時は「今、カップ、動かなかった?」などとジョークをいって照れ隠し。
バチン!!ちょっと打ちすぎかな。
ボールはカップを過ぎて大オーバー!こんな時は「stop!」なんて言わないでください。
焦ったふりして声を掛けましょう。「タクシー!」(止まってっていう意味ですね)
ホールインワンになりそうだったボールがカップの淵を破壊したとき、どんな処置が正しいでしょうか?
プロの大会では選手がそこに手を出してはいけない規則があります。アマチュアなら余計そうでしょうね。グリーンキーパーさんを呼ぶのが正解です。まぁ滅多にあることではありませんが…。
ジャストタッチならボール3個分の許容範囲。真ん中であればかなり強目に転がってきたボールでも土手に当たって入るという距離に対する許容範囲。前述のとおりカップは360度のドアを持っています。でも108mmはこれより大きくとも小さくともゴルフがつまらなくなるぴったりの大きさなのです。
昔から小さなホールカップで練習すると、本番で108ミリのホールが大きく見えるので安心してパッティングができるといわれて来ました。練習法として取り入れているトップ選手は、現在でもいます。
ゴルフはメンタルが強く影響するゲームです。同じ108ミリのカップなのに、状況や心理状態で大きくも小さくも見えるものなのです。不思議なのですが、これこそがゴルフの醍醐味で、カップの大きさの絶妙さなのでしょう。
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