みなさんいかがお過ごしですか?
先日、古い付き合いのオーストラリア人とメールのやり取りをした時でした。「日本は森林面積が多くて羨ましいわね。きっと安価で美味しい水が毎日飲めるんでしょうね」とありました。
「水」に関して苦労しているようで、彼女なりの日本の印象を綴っているのですがかなり誤解があります。実は日本の天然水とオーストラリアの水事情は大きく異なります。
「水」はいつもすぐ近くにあって当たり前、水がない生活など切実に考える方はほぼいないでしょう。そんな「水(天然水)」について掘り下げてみます。
天然水ってどんな「水」なのかな?消費動向は?
「日本人と水」に関して、世界の人の目は前述のオーストラリア人のように考えているのかもしれません。列島の背骨が山岳地帯という地形の日本では水道水が安全でおいしいというイメージが高く、ペットボトルの水を買う人は少ないと思われがちです。
しかし、事実は違います。実際には日本の「天然水」の市場規模は年々拡大しており、統計を見ると2020年に約1兆円規模に達しました。この年の「天然水」の国内消費量は約30億リットルです。これは、日本人一人あたり約24リットルに相当します。
また、「天然水」の消費量は2010年から2020年までの10年間で約2.5倍に増加しており、今後も増え続けると予測されています。
「天然水」とは地下水や湧き水など、自然に存在する水のことを指します。この「天然水」は、ミネラルや微量元素が豊富で健康や美容に良いとされています。また、環境にも優しいというメリットがあります。
「天然水」とは、一般的には地下水や湧水など、自然に存在する水のことを指します。
しかし、厚生労働省の定義では、「天然水」と表示するためには、以下の条件を満たす必要があります。
☑️ 原水が地下水であること。
☑️ 原水が安全であること。
☑️ 原水に対して人工的な加工を行わないこと。
☑️ 原水の成分や性質を保持していること
「天然水」が年々売れているのはどうして?
このように、「天然水」には厳しい基準が設けられています。そのため、「天然水」以外にも、「ミネラルウォーター」「ナチュラルウォーター」「ピュアウォーター」など、さまざまな名称で販売されているペットボトルの水があります。これらの水は、「天然水」よりも人工的な加工を行っている場合が多く、成分や性質も異なります。
「天然水」の消費量が増えている理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 健康意識の高まり
- 災害時や非常時に備える意識の高まり
- コンビニや自動販売機などで手軽に購入できるようになったこと
- 「天然水」の種類や価格帯が多様化したこと
- 以上のように、日本では「天然水」の市場規模や消費量が拡大しています。しかし、「天然水」にも環境問題や品質問題など、さまざまな課題があります。消費者としては、「天然水」を選ぶ際には、その特徴やメリット・デメリットを理解した上で、適切に利用することが大切です。
「天然水」は、自分の好みに合わせて様々な種類や味を選べるのがいいわよね。ペットボトルに入っていることで手軽さもあるわね。さらに災害時でも安心だしね。
ヨーロッパなどで売られている天然水との違いは?
世界で出回っている「天然水」と日本のそれはかなり異なります。日本では基本的に地下水や湧水などを殺菌やろ過などの処理をしても良いとされています。
欧州では「天然水」はEUの法律によって厳しく規制されており、その品質や安全性が保証されています。欧州の天然水は前述のような前処理をする必要はありません。いえいえむしろそのような処理をすると天然水として認められなくなる可能性さえあるんです。
欧州の天然水は人工的に加工されていない水のことを指します。ミネラル分が豊富で、その産地や源泉によって味や香りが異なります。
自然の恵みをそのまま味わえる素晴らしい飲料なので、まだのかたはぜひ一度お試しください。
一方、日本の天然水は、ミネラル分が少なく、無味無臭であることが求められます。
これは、日本人がお茶やコーヒーなどの飲み物に水を使うことが多いため、水自体に味や香りがあると邪魔になるからです。欧州の天然水は日本のそれよりも高級品として扱われることが多いようです。
オーストラリアの「天然水」事情は?
冒頭のオーストラリアの水事情にちょっとだけ触れておきます。
オーストラリアは水不足に悩む国の一つです。そのため、水の品質や安全性に関心が高い人は日本以上です。
オーストラリアで売られている「天然水」は本当に天然なのでしょうか?「天然水」という言葉には法的な定義がありません。つまり、どんな水でも「天然水」と名乗ることができます。ボトルに「Natural water」とあっても信用しないほうがいいでしょう。
事実、オーストラリアの「天然水」の多くは、地下水や貯水池から汲み上げた水をろ過や殺菌などの処理をしてボトルに詰めたものです。
これらの水は、一般的な水道水と同等かやや怪しいものと考えるべきです。
では、本当に天然な水はどこで手に入れることができるのでしょうか?オーストラリアには、山や森林から湧き出る清らかな泉水があります。これらの泉水は、自然のミネラルや微生物が豊富に含まれており、独特の味や香りがあります。
しかしこれらの泉水は汚染や環境破壊の影響を受けやすく、また量も限られています。そのため、市場に出回ることはほとんどありません。
オーストラリアの「天然水」事情を知ると、自分が飲んでいる水について考え直したくなりますね。オーストラリアでは、水道水が一番安全でおいしいといいますが、それでも「天然水」を選ぶ人もいます。
知っておいて損はない「水」のトリヴィア
それではちょっとクイズ風に「水の雑学~な~るほどそうだったのか”水の知識”」に行ってみましょう。あなたはどれだけご存じでしたか?
💦 日本の水質基準
日本は水質基準が厳しく、各都道府県でも独自の基準を設けるなどして、安心安全な水を提供しています。海外では、国によって基準が異なります。
💦 日本の水質硬度
日本の水道水は軟水がほとんどですが、海外では硬水がスタンダードとされています。硬度が高い水は、口当たりが重く苦みを感じることがあります。
💦 日本の水の価格
日本で売られる水は、500mlのペットボトルで100~120円くらいが相場ですが、海外では、日本の2~3倍の値段で水が売られていることも珍しくありません。
💦 日本の水のミネラル分
ヨーロッパでは、ミネラル分を一定に保つことが重視されています。対して、日本では、ミネラル分が少ない軟水が多いとされています。
💦 一日に人間の必要な水分摂取量
人間が生きていくために必要な水分量は1日2.5L といわれています。
人体は平均して尿や便から1.6L、呼吸、汗から0.9Lと計2.5Lもの水分が毎日出ていくため、失た水分と同じくらいの水分量を補う必要があります。1日に飲料から摂取すべき水分量は1.2Lですが、この1.2Lを1日7~8回に分けてこまめに補給するといいでしょう。
💦 水を飲んでから尿になるまでにかかる時間
人間が水を飲んでから尿になるまでの時間は、おおよそ6時間程度です。 ただし、かなりの個人差があり、飲んだ水分量や体調によっても異なるため一概に言えません。
💦 人体の中の水分が占める割合
人間の体内には水分が約60%含まれています。つまり体重60kgの人の場合なら約36kg分が水分ということになります。
体内の水分は、細胞内液が40%、細胞外液が20%、血液やリンパ液などに含まれるものが残りの40%です。
💦 地球に溢れるほどある海水は飲めないのか?
地球の表面をざっくり分類すると陸地30%と海洋70%に分けられます。海洋は大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収します。海水に溶け込んだCO2は炭酸イオンや炭酸水素イオンに分かれて、海洋内部に蓄積されます。近年CO2の増加により海水のアルカリ性は弱まって中性に近づいています。
海水は塩分濃度が非常に高く、人間の体液と比べると塩分濃度が約3倍も高いため、飲むと身体に悪影響を及ぼします。飲むと身体に負荷がかかり、脱水症状を引き起こす可能性があります。また、海水には細菌やウイルスなども含まれており、下痢や腹痛を引き起こすリスクもあるため飲むことはできません。
💦 人間は水なしで何日生きられるか?
一般的に人間は水分を摂取しないと(個人差はありますが)3日から5日程度で死亡すると推測されています。
しかし極限状態下での生存記録を調べると、最も長時間だったのは災害ではなく、1979年にオーストリアのレンガ職人であるアンドレアス・ミハベッツ氏が、警察署の留置場に18日間閉じ込められた際に記録されたとあります。
「水」のまとめ~雨が飲料水になるまで
雨から飲料水になるまでの流れは、大きく分けて以下の4つのステップがあります。
- 水源から原水を取り入れる
- 原水を浄水場で浄化する
- 浄水場から配水場や配水管を通して各家庭に送る
- 家庭で使った後の生活排水を下水処理施設で処理する
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
- 水源から原水を取り入れる
私たちが飲む水の主な源は、山や森に降った雨や雪です。これらは地面に浸透したり、川や湖に流れ込んだりして、ダムや貯水池などで貯められます。これらの水を原水と呼びます。原水は取水場で川やダムから引き込まれ、浄水場へ送られます。 - 原水を浄水場で浄化する
浄水場では、原水にさまざまな処理を行って、安全でおいしい飲料水にします。処理の方法は浄水場によって異なりますが、一般的には以下のような工程があります。
- せき止め:原水中の大きなゴミや泥などを取り除きます。
- 沈殿:原水に薬品を加えて、細かいゴミや泥などを沈めて取り除きます。
- 濾過:砂や砂利の層で原水をこして、さらにゴミや泥などを取り除きます。
- 消毒:塩素やオゾンなどを使って、原水中のウイルスや細菌などを殺菌します。
- 調整:pHや硬度などの水質を調整します。
- 浄水場から配水場や配水管を通して各家庭に送る
浄化された飲料水は、配水場で一時的に貯められたり、配水管で直接各家庭へ送られたりします。配水場や配水管では、ポンプやバルブなどを使って、飲料水の量や圧力を調節します。また、定期的に検査や清掃などを行って、飲料水の品質と安全性を保ちます。 - 家庭で使った後の生活排水を下水処理施設で処理する
家庭で使った後の飲料水は、台所やお風呂、トイレ、洗濯などで汚れて生活排水となります。生活排水は下水道管で下水処理施設へ運ばれます。下水処理施設では、生活排水にさまざまな処理を行って、川や海に戻すことができるようにします。処理の方法は下水処理施設によって異なりますが、一般的には以下のような工程があります。
- 篩(ふるい):生活排水中の大きなゴミや不要物を取り除きます。
- 沈殿:生活排水に薬品を加えて、細かいゴミや泥などを沈めて取り除きます。
- 活性汚泥法:生活排水に空気を送り込んで、微生物に有機物や窒素などを分解させます。
- 堆肥化:生活排水から取り除いた泥や有機物を発酵させて、堆肥にします。
- 消毒:塩素やオゾンなどを使って、生活排水中のウイルスや細菌などを殺菌します。
以上が、雨から飲料水になるまでの流れです。私たちが飲む水は、自然と人間の技術によって、大切に循環されていることがわかります。水は私たちの生命と暮らしを支える貴重な資源です。無駄に使わないように節約し、汚さないように注意しましょう。
飲料水と日常の関りについて
「飲料水と日常の関りについて」最近水質管理の専門家にお話を伺う機会がありました。
飲料水とは、人間が安全に飲むことができる水のことです。飲料水は、私たちの健康や生活に欠かせないものですが、意外なことにその重要性について十分に理解していないことを知りました。あまりにも水は身近すぎるんですね。
前述のように飲料水は私たちの体の約60%を構成しています。
水分が不足すると、脱水症状や熱中症などの危険な状態に陥ることがあります。また、水分は血液やリンパ液などの体液の成分であり、栄養素や酸素を全身に運ぶ役割を果たしています。
水分は体温調節や代謝などの生命活動にも必要です。したがって、飲料水は私たちの健康を維持するために不可欠なものなのです。
飲料水は、私たちの生活にも密接に関わっています。例えば、料理や食事には欠かせません。また、お茶やコーヒーなどの飲み物も飲料水から作られます。
さらに、歯磨きや洗顔などの身だしなみや衛生にも飲料水が使われます。また、花や植物に水やりをすることも、飲料水を利用する一例です。このように、飲料水は私たちの日常生活の中でさまざまな場面で使われています。
地球で飲料水になる水は決して無限にあるものではありません。
世界の水資源のうち淡水は約2.5%しかありません。
そのうち氷河や雪氷などに固定されているものが約70%であるため、利用可能な淡水は約0.75%しかありません。
さらに人口増加や産業発展などにより、淡水の需要は増加しています。
一方で、気候変動や汚染などにより淡水の供給は減少しています。
このように、淡水は非常に貴重で限られた資源なのです。
「節水」こそこれからの一大目標
そこで、私たちは飲料水を大切に使うことが求められています。具体的には、以下のようなことができます。
- 飲み残したお茶やコーヒーなどを捨てずに再利用する
- 料理や洗顔などで使った水を植物にあげる
- 歯磨きや洗顔時に蛇口を閉める
- 風呂上がりのお湯を洗濯や掃除に使う
- 節水型のシャワーヘッドやトイレを設置する
このように、少しの工夫で飲料水を節約することができます。飲料水は私たちの健康や生活に欠かせないものですが、同時に貴重で限られた資源でもあります。私たちは飲料水と日常の関りを意識し、大切に使うことで、自分自身だけでなく、地球や未来の世代のためにも貢献できるのです。
温暖化と水の深~い関係
水と二酸化炭素(CO2)は地球の気候や生物にとって重要な役割を果たしています。
水は、太陽の熱を吸収したり反射したりすることで地球の温度を調節します。
また、水は、植物や動物が生きるために必要な酸素や栄養素を運ぶ媒体でもあります。一方、CO2は、温室効果ガスの一種であり、大気中に多く存在すると、地球の温度が上昇する原因となります。
しかし、CO2もまた、植物が光合成を行うために必要な物質です。植物は光合成によってCO2を吸収し、酸素や有機物を生成します。このように水とCO2は地球の環境や生命に影響を与える相互作用を持っています。
温暖化とは地球の平均気温が上昇する現象のことです。温暖化によって、氷河や氷床が溶けて海面が上昇したり気候が変動したり、生態系に影響を与えたりすることが懸念されています。
水は、温暖化の原因と結果の両方に関係しています。温暖化の原因として、水は二酸化炭素などの温室効果ガスと同じく、太陽からの熱を吸収して放出する働きをします。この働きを放射強制と呼びます。
水蒸気は大気中に最も多く存在する温室効果ガスであり、放射強制は二酸化炭素の約2倍です。つまり、水蒸気は地球を温める効果が非常に高いのです。
また、雲も水蒸気からできるため、雲の量や種類によっても地球の温度に影響を与えます。雲は太陽からの熱を反射する効果と、地球からの熱を逃がさない効果の両方を持ちます。一般的には、低い雲は反射効果が高くて冷却効果がありますが、高い雲は逃がさない効果が高くて温暖化効果があります。
温暖化の結果として、水は海面上昇や降水量の変化などに関係しています。海面上昇は、氷河や氷床が溶けることと、水が温まることで膨張することによって起こります。
海面上昇によって、沿岸部の浸水や侵食、塩分の浸透などが問題になります。
降水量の変化は、気温や風向きなどの気候要素によって起こります。温暖化によって、一部の地域では乾燥や旱魃が増えたり、一部の地域では豪雨や洪水が増えたりします。降水量の変化によって、農業や水資源、生態系などに影響が出ます。
以上のように、水は温暖化と密接な関係にあります。私たちは、水を大切に使うだけでなく、温室効果ガスの排出を抑えることで、温暖化を防ぐことに貢献できます。
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