巷間喧しいのが「富士山噴火」という重いワードです。
『災いは忘れたころにやってくる』。これは古代ギリシャの詩人ヘシオドスが書いた「仕事と日々」という詩集に出てくる諺です。コケオドシではありませんよ。
富士山噴火はあるのかないのか?予知できる人は世の中にいません。でも不安がっているだけではあまりにも惨めです。でも「起きたときはそのときだよ」などはNG、正しく怖れる姿勢が望ましいのです。
では何ができるか?
そう、「十分な備え」ならだれでもできます。
富士山噴火~最善で唯一の手段「備えあれば憂いなし」
日本は台風、南海トラフ、富士山噴火などの風土的懸念から逃れられない国です。富士山噴火の前兆を予測することは困難で、光ファイバーや火山ガスを使った調査が続いています。
日本には活火山だけで111座もありますが、富士山噴火がとりわけ取り上げられるのは、噴火したときの影響が計り知れないという恐怖があるからですね。
富士山は300年以上噴火が起きていません。しかし専門家たちは「噴火は必ず起こる」と警鐘を鳴らしています。2023年3月、富士山噴火を想定した新しい避難計画がまとまりました。
ハザードマップと避難計画は?
東京を含む首都圏の広範囲に降るとされる火山灰の影響などをざっくり明らかにします。
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イソップ寓話の「オオカミ少年の物語」は「狼が来たぞー」と何度も何度も嘘をつき、村人を驚かせて面白がっていた少年のお話でした。
ある日、本当に狼がやってきて羊が食べられてしまいます。
一般には「嘘をついてはいけない」という訓話なのですが、恐怖心が弱体化する反動に対しても警鐘を鳴らしているのです。
「地震」や「富士山噴火」などがそれにあたります。同じ言葉のリピートは学習や習慣の形成に役立つ一方で、災害関連などのマイナスな言葉や感情にも影響されにくくするデメリットがあります。慣れっこになってしまうんですね。
富士山の噴火による被害の想定
富士山は日本の象徴とも言える美しい山ですが、実は活火山なので過去に何度も噴火を繰り返しています。
最後の噴火は江戸中期の「宝永噴火」(1707年)で、それ以来富士山は300年以上も不気味な沈黙をしています。
宝永噴火では東京や横浜にも火山灰が降った記録が残っています。
しかし、平安時代には800年~1083年の間に12回噴火したとの記録があります。
もし富士山が再び噴火したら、どのような被害が起こるのでしょうか。それこそ何がどうなるかわからない予測にとどまるからですね。
富士山噴火については次のような被害が考えられます。
🧑✈️ 885万人が火山灰2センチ以上の地域に居住している
噴火に伴う大量の火山灰が空中高く放出されるでしょう。風の影響をもろに受けます。
冬はシベリア高気圧とアリューシャン低気圧がともに強まり、日本付近は冬型の気圧配置になります。冷たい寒気が日本へ南下し、強い北~北西の季節風が吹きます。
富士山がある太平洋側では山から吹き下ろす乾いた風となり、噴火すると灰が空中に放出され風に乗って広範囲に降り積もります。
火山灰はガラスや鉱物の小さな粒で拡大すると渕はギザギザしています。なので吸い込んだり、目や皮膚に付着したりすると短時間で人体を損傷します。
水に溶けないため長期間残留します。火山灰は屋根に積もって重量を増し家屋の倒壊や雨漏りを引き起こします。(内閣府・中央防災会議の報告書などを参考)
- 電車は走れなくなる=レールを使った交通機関は、レール上に1mmでも灰が積もるとブレーキが利かなくなるので全面ストップです。
- 交通網は遮断され新幹線や高速道路の一部は土石流や溶岩流にのみ込まれることもあるでしょう。
- 道路の排水溝や下水道が詰まり、火山灰が送電線に堆積して停電を引き起こします。
基本的にライフラインは遮断されると考えていいでしょう。
その関係から健康被害が発生します。=林業や戸外の仕事をする人は呼吸ができなくなるので活動停止になります。
火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人が出る可能性があります。
🧑✈️ そのほかに懸念される被害予想
- 道路が遮断され、陸の孤島がいたるところに発生するでしょう。
物流がストップし経済が甚大な被害を受け、食糧不足、物資不足となる可能性は大です。 - 噴火口から飛び出した岩石や軽石が周囲にいたるところを直撃することで、人、建物、車などに損傷を与えます。(富士山周辺の静岡県や山梨県では、死傷者や家屋の全壊などの重大な被害が予想され人口約13,600人、車約3,800台が重大な損傷を受ける可能性があります。
- 火山灰は河川をせき止めてダム湖を形成したり、水源地を汚染するので当分の間は飲料水に影響が出ます。
先ほども書きましたが確実なことは人間では予想がつかず、すべては想定の範囲になります。実際の噴火では規模や方向などが変わるでしょう。
内閣府の富士山ハザードマップ検討委員会は、宝永噴火と同じような噴火が起こったと仮定しての被害額試算を2兆5,000億円としています。(2004年、内閣府富士山ハザードマップ検討委員会)
※上の図は「内閣府・防災のページ」より引用
富士山噴火は富士山周辺だけの問題ではなく、全国的に火山防災に備える必要があります。
富士山ハザードマップや火山灰予測マップなどを参考にしてご自分の住む地域の危険性や避難方法を確認しておくべきです。
溶岩ドームが崩壊すると火砕流が発生します。高温の火山灰や石や岩が水蒸気と一体化し山の斜面を高速で下っていきます。火砕流の落下速度は100km/hを越えることも。
溶岩流(河口から出たマグマ)は歩く程度の速度で建物を次々に破壊し、人が巻き込まれた場合は死を免れません。その温度は800度~1,200度と非常に高温で家屋や木々を燃やし尽くし、道路を寸断します。
富士山が噴火した場合のまとめ
2021年3月には17年ぶりに富士山噴火のハザードマップ(災害予測地図)が改正されました。
この内容を見ると富士山の噴火が起きたときは、東海道新幹線や東名高速道路の一部が溶岩流にのみ込まれるとなっています。
一言で噴火といいますが、噴火の形態や規模、それにどこが噴火口になるのかなどあまりに多様な噴火になりそうで実態とは差が生じることが考えられます。
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富士山が噴火したらという予測の段階では最悪を想定した「首都マヒ」に備えるべきです。
国土交通省管轄の中央防災会議作業部会が2020年4月に公表したデータでは、架空のシナリオを作成して起きうる事態を紹介しています。
「火山と共存する桜島の人々の知恵」
火山灰が降るなんて普段でもあまり想定していないし、実際にどう行動すればいいのかわかりませんよね。
ひとつのヒントとしては60年以上も毎日のように降り積もる火山灰の中で、火山とともに暮らす人々の鹿児島県・櫻島周辺に暮らす人々の知恵を学ぶべきです。
①火山灰は下水に流さない
火山灰を下水に流すと詰まってしまいます。桜島では「克灰袋」(こくはいぶくろ)という袋を市が無料で配布。この中に灰を集め指定の場所に集めて市が定期的に回収する。
「灰は積もったら家庭や個人ですぐ取る。そういう習慣」がひとつ。
②車の運転はスピードを落とす
火山灰が降っているのにスピードを出して走ると、火山灰が直接フロントガラスに当たってガラスが傷んでしまいます。経験がない人は火山灰が硬いことを知らない。
③スリップ事故を防ぐ
活発に噴火する火山の周辺地域の鹿児島市では、スリップ事故などが起きないよう”ロードスイーパー”という車で、道路の灰を取り除きます。
自治体ごと働き掛けないと火山灰対策は完結しません。
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