今日は和食のお話をしましょう。
筆者は今までに仕事とプライベート合わせて23の国と地域を訪問しました。住んだのは1か国だけですが約3年を過ごしました。
本格的な和食は口にできず、和食もどきばかりだったので味が恋しくなるばかりでした。
ある日、”生サンマが空輸で届いたよ!”という和食レストランのママさんからの電話を受け、すぐに1時間かけてすっ飛んでいったことを思い出します。
和食の原点は”自然と共生する日本人”の心
和食は、2013年にユネスコ無形文化遺産になりました。
「和食 ・日本の伝統的な食文化」としての登録づす。
和食を一言で言い表すのは難しいことです。それはすでに歴史と伝統を備えた文化になっているからですね。
「和食は素材」といっていいでしょう。食材が持つ本来のすばらしさを損なうことなく、かつ満遍なく生かし切った料理です。
和食には旬の季節感を大切にするという特徴があります。さらに魚にしろ野菜にしろ特定の指定産地の食材を使ったものは極上になります。
つまり地域の自然と食す人の心を和食で結ぼうという気持ちが込められているのです。
そもそも日本人の心のなかには「物を大切にする」という先人の伝承が強く根付いています。自然の恵みを大切にする、決して無駄は出さない、そしていただくときは感謝するという3つの教えが入っているわけですね。
食材の環境に恵まれている日本という国
日本という国はほかの国には少ない「超地震国」であり、台風の被害がない年はないという劣悪な側面があります。しかしそういった負の環境はどこの国にもあるものです。
でも地理的に海に囲まれた孤島だったおかげで侵略から逃れてきた好都合なところもあって、その部分では痛み分けといえます。
日本を守ってくれた東西南北の豊かな海は魚の宝庫です。
さらには山の幸、里の恵みと豊かな自然が与えてくれる多様で新鮮な旬の食材に溢れています。
この恵まれた環境を母にして、旨味に富んだ発酵食品、お米を中心とした栄養バランスに優れた「和食」という子が生まれました。
さらに副産物として、おいしい和食が世界でも優れた「陶器」を作り出してきました。「ほ~~ぉ、いい仕事してますねぇ」なんてずっと言われてきたんですね。
料理の天才・北王路魯山人は「食器は料理の着物である」と言い残しました。それこそ美しい日本料理があったからこそ、世界が評価する焼き物文化が生まれたのでしょう。
和食の魅力と和食を守る団体や組織
「和食」は日々繰り返す食事の場でごく自然に「自然の美しさ」を表現します。盛り付けなどその良い例ですね。
さらにお正月からはじまる年中行事、さらには地域のイベントや人生儀礼との密接な結びつきがあります。
先ほど少し触れた話題ですが日本には四季があることも和食の発展に関係があります。今述べた地域行事と食材のなかで生まれた地方の料理は切っても切り離せない関係にあります。
例えば昔のひな祭りでは菱餅が並びます。水草の種子のヒシの実の形で、ヒシの繁殖力の強さから子孫繁栄や長寿の願いを込めました。
養蚕が盛んな地域では、木の枝の先に小さな餅をいっぱい刺して「繭玉」というお飾りを作り、神棚に飾ってお蚕さんの成長を祈願しました。
実りの秋には食べ物を恵んでくれた自然に感謝し、来年の五穀豊穣を祈る祭りが全国各地で盛んに行われます。
こうして毎年繰り返され「食に対する感謝」が日本人に根付いていったのです。
11月24日は「和食の日」~収穫の秋に感謝を
11月24日は『和食の日』です。
この日を制定したのは一般社団法人・和食文化国民会議(略称:和食会議=東京都台東区東上野)です。
公式な記念日としては一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。
前述のように「秋」というシーズンは、日本の食文化にとって大変重要な時です。
五穀豊穣・食欲の秋、この実りの秋は和食の食彩が賑わいます。この時期はとても良いチャンスなので「和食」文化の保護・継承に一役買ってもらおうというところですね。
この日が和食会議の願い通り、国民ひとりひとりが「和食文化」について話し合ったりして認識を深めるきっかけになればいいですね。
秋の11月ということで、「いい(11)に(2)ほんしょ(4)く=いい日本食」と苦労した語呂合わせからかもしれません。
和食文化国民会議は日本の食にかかわる生産者、関係企業、地方自治体、郷土料理保存会など多数の会員が所属しているのよ。和食の継承を推進する団体よね。
和食レストランは世界の隅々まで~もうすぐ20万店
和食は今世紀に入って以来、世界的に人気が高まっています。
2013年にはユネスコの無形文化遺産に認定されたことをきっかけに、海外での日本食レストランの数が激増中なのはニュースでご存じでしょう。
和食の特徴である多様で新鮮な食材とその持ち味が、海外の人々の注目を集めたからでしょうか。
いやいやそれだけではありません。
ビジュアル的な美しさ、和食の盛り付けはすでにアートの世界といっていいでしょう。
それどころか健康的な食生活を支える栄養バランス、日本の四季の自然の移ろいの表現、正月などの年中行事との密接な関わりとくると「和食ブーム」が起こったのも納得です。
あなたは今世界にどのくらいの和食レストランがあると想像しますか?
海外における日本食レストラン数。2006年には約2.4万店でした。
そして2017年には約11.8万店。
そして2023年10月30日の農水省の発表では18.7万店!2年で2割増です。
この増加傾向は日本の農林水産物や加工食品の輸出額にも反映されています。
日本食を食べている海外の人は料理のうまさだけはなく、食べた経験を踏まえてヘルシーであることを感じ取ったようです。
2013年からはグッと右肩上がりです。
2012年は4,497億円でしたが2016年は7,502億円と伸びています。2017年はついに8,000億円台に乗せました。
政府は1兆円を目標として、海外における日本食レストランの増加と日本食材輸出を推進しています。
和食文化の歴史とまとめ
いまでこそ世界中に広がった「和食」、いったいどこからスタートしたんでしょうね。あなたもきっと同じ疑問をお持ちではないかと…。
和食の歴史を調べていくとはっきりとどことはいえないものの、エポックメイキングな出来事は675年に天武天皇によって発布された「肉食禁止令」があります。
結果的に天武天皇の判断のおかげで日本人が長寿国家になったといえます。
明治時代初頭に解禁されるまでざっくりと1,200年、まぁ肉食がゼロだったとはいえませんが少なかったことは事実です。
陰で食べていた地方の人たちがいて、その名残がウサギを1羽・2羽と数えるあたりに残っています。ウサギは肉ではなく鳥だよというわけですね。
この1,200年の間、日本人は魚介類で動物性たんぱく質をとり、大豆と米で植物性たんぱく質を補給する健康で長寿効果の高い食生活が続きました。
余談ですが、いつか伊豆・下田の「玉泉寺」を訪ねたことがありました。ご存じかもしれませんがこの寺は開国のころアメリカ人の一行が数か月も宿泊したところです。
ここに「牛肉と牛乳」を要求されて驚いた地元民のエピソードが書かれていて興味深く読みました。肉食は、西洋と比べれば著しく少ないものになりました。
日本人の「食」の工夫
稲作は紀元前600年以上前から日本に根付きました。
でも肉類に比べて若干物足りないところを補うのに「だし」が登場します。
ここから和食は日本人独特の「お・も・て・な・し」の精神から、見た目の美しさにもこだわる料理様式を生み出していったのです。
和食の基本形というと「ごはん+汁物+副食(おかず)+つけ物」です。
ご飯に汁物、おかず(主菜、副菜2品)で構成された献立
のことです。ご飯の役目はエネルギー源となる炭水化物。汁物で水分。おかず
で栄養バランスとることができます。
ふだんの食事でおかずが魚や肉・豆腐などのたんぱく
質を中心としたものばかりに偏ってはいけませんね。野菜中心でないとミネラルや食
物繊維が不足します。
今回は和食について、その長い歴史と地域によって異なる料理がそれぞれの地域の特色を反映してきた流れをお話しました。
和食っていいですね。季節感あり~の地域差あり~の、腕を振るすごワザの調理人あり~のと、まさに日本の誇る文化ですね。
ところで・・・、今日のご飯はなににしますか?
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